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公務災害補償制度

公務災害補償制度の性格

1.公務災害補償制度の意義

非常勤消防団員等が公務上の災害を受けた場合に、市町村等が非常勤消防団員等又はその遺族に対し、その災害によって生じた損害を補償し、併せて被災団員の社会復帰の促進、遺族の擁護等を図るために必要な事業を行うものです。

2.公務災害補償制度の特徴

  1. ①無過失責任主義
    市町村等は、使用者としての過失責任の有無にかかわらず、無過失の補償責任を負うものとされています。
  2. ②身体的損害に対する補償
    補償の対象となる損害は、身体的損害に限られ、物的損害や精神的損害(慰謝料)は含まれません。
  3. ③定型的補償
    組合の補償条例に定める補償基礎額に各補償ごとに定められている倍数を乗じた額となっています。(療養補償、介護補償は除きます。)

公務災害補償の対象者

1.消防団員

消火、操法訓練等の消防団の業務により被災した場合

2.民間協力者

(1) 消防作業従事者

  1. ①火災現場付近にいて、応急消火義務者の行う応急消火に協力を行った者
  2. ②マンション、アパートのような専有部分がある建築物の火災の場合において、火災の発生した専有部分以外の居住者等で消防隊の到着前に消火若しくは延焼の防止又は人命の救助(応急消火)に従事した者
  3. ③火災現場付近で、消防吏員、消防団員又は航空消防隊に属する都道府県の職員から要請を受けて消防作業に従事した者
  4. ④水災を除くその他の災害(暴風、豪雨、地震などによる大規模災害又は大規模事故)の場合において、消防業務に従事したり協力したりした者

(2) 救急業務協力者

  1. ①事故現場付近で、救急隊員から要請を受けて救急業務に協力した者
  2. ②事故現場等で、119番通報により「口頭指導員」の協力要請のもとで傷病者の応急手当に従事した者

(3) 水防従事者

水防管理団体区域内に居住する者又は水防の現場にある者で、水防管理者、水防団長等からの要請を受けて水防作業に従事した者

(4) 応急措置従事者

市町村の区域内に災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合(原子力災害の発生で原子力緊急事態宣言があった場合を含む。)において、区域内に居住する者又は災害現場にある者で、市町村長から要請を受けて応急措置(災害の発生を防ぎょし、又は災害の拡大を防止するための必要な措置)の業務に従事した者

消防団の公務の範囲

1.消防団の業務

消防団の業務は多岐にわたっており、その範囲も消防の任務の直接遂行行為に限らず、広範なものになっています。この消防団の代表的な業務を列挙すると次のとおりです。(「消防力の整備指針」第36条(平成12年1月消防庁告示第1号))

「消防団の業務」

①火災の鎮圧に関する業務 消火活動、火災発生時における連絡業務、火災現場における警戒(鎮圧後の警戒を含む)
②火災の予防及び警戒に関する業務 防災訓練・広報活動等の火災予防活動、独居老人宅等への戸別訪問による防火指導、年末警戒、夜回り、花火大会等における警戒
③救助に関する業務 水難救助活動、山岳救助活動、交通事故等における救助活動、救助事故現場における警戒、行方不明者の捜索
④地震、風水害等の災害の予防、警戒及び防除並びに災害時における住民の避難誘導等に関する業務 住民の避難誘導、災害防除活動、災害現場における警戒、災害発生時における連絡業務、危険個所の警戒
⑤武力攻撃事態等における警報の伝達、住民の避難誘導等国民の保護のための措置に関する業務 住民への警報や避難指示の伝達、住民の避難誘導
⑥地域住民(自主防災組織等を含む)等に対する指導、協力、支援及び啓発に関する業務 自主防災組織等に対する指導・協力・支援、応急手当の普及指導、イベント等の警戒、スポーツ大会等への参加を通じた防災意識の啓発、木遣り・音楽隊等の活動を通じた防災意識の啓発、老人ホーム等各種施設・団体での防火啓発
⑦消防団の庶務の処理等の業務 業務計画の策定、経理事務、団員の募集、広報誌の発行、その他庶務関係業務
⑧その他、地域の実情に応じて、特に必要とされる業務 資機材の点検整備、消防水利確保のための草刈り等、操法訓練、その他地域の実情に応じて特に必要とされる業務

2.個別事例

  1. ①焼失家屋等の後片付け活動
    建物火災等の鎮圧後における再燃防止のための後片付け活動は公務として取り扱われます。
  2. ②地域安全活動
    消防団が、消防機関の活動の一環として、防火に関する地域パトロール又は広報活動を警察機関と合同で実施する場合は、公務として取り扱われます。
  3. ③花火大会等における警戒等
    花火大会、祭礼、イベント等での火災警戒や、雑踏事故を未然に防ぐための会場整理等は公務として取り扱われます。また、行事開催中の会場整理、会場の準備・後始末についても、これに準じて、公務として取り扱われます。
  4. ④水難、山岳救助活動
    遭難船舶での救出活動・行方不明者捜索や山岳遭難等における救助活動は、公務として取り扱われます。
  5. ⑤行方不明者の捜索活動
    山菜取り等災害によらない行方不明者の捜索は、市町村長の要請により団長の命令で出動し、その捜索活動に従事した場合は、公務として取り扱われます。
  6. ⑥町内運動会等への参加活動
    消防団の広報、または住民への防火意識の啓発等を目的として、消防団として参加したものについては、公務として取り扱われます。
  7. ⑦消防施設の補修・整備
    消防団員が行う消防団詰所、器具倉庫、やぐらなどの補修・整備で軽微なものや消防水利確保のための草刈り作業などは、公務として取り扱われます。
  8. ⑧視察研修旅行
    消防施設等の先進地視察など、その目的が消防に関連した研修、学習的意義をもつ内容であるものは、公務として取り扱われます。
  9. ⑨レクリエーション行事
    レクリエーション行事については、体力錬成を目的として、消防団の公的行事(年間行事計画に入っていること)として実施された場合は、公務として取り扱われます。
  10. ⑩反省会等
    会議、出初式等の行事後の反省会等であって飲酒を伴うものについては、当該行事に付随するものとして予め団長が計画し、かつ、その趣旨、内容及び開始時間、所要時間、飲酒量等からみて、社会通念上、当該行事との関連性を失わない程度のものであれば、当該行事に付随するものとみなして、公務として取り扱われます。ただし、消防団員の災害が飲酒による場合は、公務災害に該当しません。

3.消防の任務遂行に伴う行為

  1. ①消防の任務遂行に伴う合理的行為
    生理的必要行為、食事行為、待機行為
  2. ②準備・後始末行為
    制服の着替え、機械器具の点検準備
  3. ③出張の期間中である場合
    消防大学入校等で用務地が管轄区域外の場合
  4. ④公務遂行に伴う往復行為
    ア 始点と終点
    (ア) 火災、水災等の非常時の場合
    ・始点は災害の発生を覚知又は出動命令を受けた場所
    ・終点は自宅敷地(門扉、共同住宅の場合は各戸のドア)
    (イ) 訓練、会議等の平常時の場合
    ・始点、終点とも自宅敷地(門扉、共同住宅の場合は各戸のドア)
    イ 帰路途上の逸脱・中断
    通常の経路をそれて飲食店に立ち寄った場合(逸脱)や、帰路途上で飲食した場合(中断)などは、合理的行為や日常生活上必要であると認められる場合を除き、その後の行為が対象外となります。
    ウ 経路の選択
    公務従事場所と自宅等の往復経路は、社会常識の範囲内で妥当と認められる道筋によります。

4.公務災害認定の基本的考え方

公務災害に該当する(公務上)か、該当しない(公務外)かは、他の災害補償制度の取扱いに準じ、まず、公務遂行性があるか否か、次に公務起因性が認められるか否かにより判断します。

  1. (1) 公務遂行性
    「公務遂行性」とは、消防団員の場合、上司(団長、副団長、分団長等)の命令に従い正規の消防団の業務(公務)に従事していることをいいます。
  2. (2) 公務起因性
    「公務起因性」とは、公務に従事したことにより負傷し、又は肉体的、精神的に過重な負担がかかり疾病にかかったことをいいます。その場合、公務に従事したことと、負傷又は疾病にかかったことの間に社会常識ないし経験則に照らし合わせて原因と結果の関係が認められること(相当因果関係の成立)が必要とされます。

    1. ①負傷についての公務起因性の判断
      負傷の場合には可視的であることが多いので、おおむね医学的判断を待たず公務起因性を判断することができます。
      ただし、時間的経過がある場合や外観のみでは判断ができない場合には医学的判断が必要になります。
    2. ②疾病についての公務起因性の判断
      疾病の場合には、外観から判断することができないので、専ら医学的判断により公務起因性を判断します。
    3. ③基礎疾患(持病)と公務起因性の判断
      脳・心臓疾患で、高血圧など基礎疾患や特定の疾患にり患しやすい素因があるときには、公務による明らかな肉体的・精神的過重負荷が基礎疾患による血管病変等の自然経過(加齢や通常の生活)を著しく超えて、脳血管疾患等を発症させたと認められる場合に公務起因性があると判断されます。
    4. ④過重負荷の評価
      公務起因性を判断する際の過重負荷の評価については、発症直前から前日までの間の異常な出来事や、発症に近接した時期(おおむね1週間)における特に過重な業務による肉体的・精神的負荷の有無のほか、その時点からおおむね6か月遡及した期間における当該負荷(過労)の有無も考慮することとしています。
  3. (3) その他
    公務遂行性が認められないときでも、次の場合は、公務上の災害と認められることがあります。

    1. ①詰所など消防施設の設備の不完全又は管理上の不注意等により発生した負傷
      ホース乾燥塔の下で休憩中に乾燥塔の故障でホースが落下して負傷したときなど
    2. ②業務の遂行に伴う怨恨によって発生した負傷
      以前に火災現場で注意した野次馬に消防団活動時でないときに出くわし、注意した際の怨恨により暴行されたときなど
    3. ③公務上の負傷又は疾病と相当因果関係をもって発生した負傷
      公務災害の療養中に、病院内や通院途上等で新たな事故により負傷したときなど

損害補償の種類と概要

1.療養補償

負傷したり疾病にかかった場合に、医師の診察、薬剤や治療材料の支給、処置、手術その他の治療等の必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を支給するものです。

2.休業補償

負傷したり疾病にかかったりした場合に、療養のため勤務や業務に従事することができず、給与や業務上の収入を得られなかったときに、その勤務や業務に従事することができない期間、1日につき補償基礎額の100分の60に相当する額を支給するものです。

3.傷病補償年金

負傷したり疾病にかかったりした場合で、療養の開始後1年6か月を経過してもその傷病が治らず、一定の傷病等級に該当するときに、その傷病が継続している期間、年金を支給するものです。

4.障害補償

負傷したり疾病にかかったりした場合で、その傷病は治ったが一定の障害が残ったときに、障害等級第1級から第7級までの者には年金として、障害等級第8級から第14級までの者には一時金として支給するものです。
なお、障害補償年金に関連して、次の特例があります。

  1. ①障害補償年金差額一時金
    障害補償年金の受給権者が死亡した場合において、既に支払われたその年金と前払一時金の合計額が、その障害の程度に応じた一定額(補償基礎額の1,340倍~560倍)に満たないときに、その遺族に対してその差額を支給するものです。
  2. ②障害補償年金前払一時金
    障害補償年金の受給権者が、年金の支給決定から1年以内にその前払いを申し出たときは、一定額(1,200倍~200倍)の中から選択した額をその後に受ける年金の前払一時金として支給するものです。

5.介護補償

傷病等級第2級以上の傷病補償年金又は障害等級第2級以上の障害補償年金を受給する原因となった障害のうち、特定の障害により、常時又は随時介護を要する状態にある者が、介護費用を支出して介護を受けた場合又は介護費用を支出せずに親族等から介護を受けた場合(親族介護)に、限度額内の実費又は定額を支給するものです。

6.遺族補償

非常勤消防団員等が死亡した場合に、その遺族に対して、遺族補償年金又は遺族補償一時金を支給するものです。

  1. ①遺族補償年金
    非常勤消防団員等の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、非常勤消防団員等の死亡の当時、その収入によって生計を維持していた者のうち、その最先順位にある者に対して、その者及びその者と生計を同じくしている遺族の人数に応じて、年金を支給するものです。
  2. ②遺族補償一時金
    非常勤消防団員等の死亡の当時、遺族補償年金を受ける遺族がいないとき、その他の遺族のうち最先順位にある者に対して、一時金を支給するものです。
  3. ③遺族補償年金前払一時金
    遺族補償年金の受給権者が、年金の支給決定から1年以内にその前払いを申し出たときは、一定額(1,000倍~200倍)の中から選択した額をその後に受ける年金の前払一時金として支給するものです。

7.葬祭補償

非常勤消防団員等の死亡に際して、遺族等が葬祭を行った場合に、その者に対して支給するものです。

8.福祉事業

福祉事業は、被災団員又はその遺族の福祉を増進するため、法的義務として行う損害補償を補完する付加的給付であり、消防団員等公務災害補償等共済基金が市町村に代わって行っているものです。

実際に災害が発生した際の流れは、こちらのとおりとなりますが、はじめに下記の災害発生報告書の提出をお願いいたします。

公務災害認定後の補償費等の請求に必要な書類は、こちらからダウンロードして下さい(消防団員等公務災害補償等共済基金のホームページからもダウンロードできます)。